INTERVIEW (The Plashments Vo.G 吉川コウタ)

The Plashments

初期パンクロックを今、体感させてくれる
若きダークホース、彗星のようにデビュー。

都内を中心に、全国のライブハウスで精力的な活動を展開している、
The Plashments(ザ・プラッシュメンツ)。
初期ロンドン・パンクを彷彿させるアンサンブル、
名だたるパンクバンド達同様、ロックンロールに根底を持つのが
ありありと分かる楽曲、そしてメッセージ性を内包した全英詞。
吉川コウタ(Vo&Gt)のどこか不遜でいながらも、
確固たる信念を根底に感じさせる目付き。
まさにシーンのダークホース、独自の世界観を持つバンドである。
全12曲、フル・アルバムを一気に完成させた彼ら。
M-1の“Naive”のイントロで「何か」が起こることをリスナーに確信させるであろう、
これぞ「発見」、期待のニューカマーのデビュー作品。

■初めましてですね。The Plashmentsの成り立ち、吉川さんの音楽への出会いをまず聞かせて下さい。
吉川コウタ:親がずっと……ビートルズとかジャクソン・ブラウンとかを聴いてて──あと、姉が11歳上にいるんですけど、僕が物心ついた時にはもう姉は高校生だったので、姉がずっとTVKで洋楽番組を見てるのを横で見てて。その頃はもうブリットポップ、オアシスとかが流れてたのかな。それで、「ミュージックステーション」をテレビで見てたら、THE HIGH-LOWSが出てきて、「青春」を演ったんですね。それが凄く衝撃で。ロックンロールでカッコいいと思いました。音楽聴いて興奮するみたいなのは、それが初めてかな。
■それはいくつの時?
吉川コウタ:小学校5年ぐらいの時です。「リラクシン(Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS)」のツアーをやってた時に、ちょうど「青春」が出た時にやってたんで、2000年とかだから9歳、10歳くらいだったと思うんですけど、白井(Key.)さんが何故かパンダだかリスの着ぐるみを着てて、松田聖子さんも出てたんですけど「聖子ちゃんにサインを貰いました」とか言ってたり(笑)。それが4カウントであの「青春」が鳴った瞬間に、ルール違反じゃないですか!「こんなのアリかよ、カッコいいな!」って、でもそれが“カッコいいな”って言葉も出なかった、「何だこの感じは?」って思って。それからTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか、Blankey Jet Cityとか、あとはSNAIL RAMPとか、いわゆるロックっていうのを聴いてカッコいいと思えるようになった感じですかね。
■そこから、自分がギターを手に取るってまではどうだったんですか?
吉川コウタ:ギターは…
■あった?
吉川コウタ:はい、姉がバンドやってたんで。でも何かのタイミングで──多分中学生ぐらいの時におねだりして買ってもらったのが最初ですね。で、それを弾いて……ニルヴァーナ、グリーン・デイとかを。でも当時、サッカーもやってたし、あまり「俺はバンドマンになる」って言う想いはなかったんですけど。中学2年かな……THE CLASHのジョー・ストラマーが亡くなって。その追悼番組ななにかでTHE CLASHを観て、「何だよ、このカッコいい人たち」みたいな。それで、パンクを好きになったりして。「俺でも出来るんじゃないの?」って思い始めて……バンドを始めたんですよね。
■それはThe Plashmentsのメンバー?
吉川コウタ:いや、違います。恵まれてたのは、同時期にパンクを好きになった友達がいて、その兄貴と、彼の友達とで組んだバンドだったから、結構ライブハウスでライブを演るって事に対してノウハウがあったというか(笑)、ハードルが低かったんですね。
そのバンド体験があって、徐々に「自分で曲を書きたい」っていう風に思ってたんですけど。最初は自分で曲を書けるなんて思ってなくて、曲は書ける奴が書けばいいんじゃないかな、って思ってました(笑)。
■自分じゃなくて(笑)
吉川コウタ:そうです(笑)。日常生活を送ってる中で、曲なんて書けると思ってなかったんですけど、高校を卒業する頃になって「待っててもダメだな、とにかくやってみよう!」って書き始めてみて。意外と仲間とそれを合わせてみたら、カッコいい音が出せたな、と思う事もあって。
■そこでThe Plashments。
吉川コウタ:そうですね。メンバーはベースだけ変わったんですけど、他の3人は不動で。自分のバンドを持ちたいと思って、それぞれを誘って、スタジオ入って……最初は「Sweet Jane」をカバーして、「Chinese Rocks」と「Sweet Jane」の2曲を延々(笑)……。
■えーっ!?(笑)。
吉川コウタ:嘘みたいなんだけど、本当の話なんですよ(笑)。というのも、本当に、ドラムがドラムを叩けなかったんですよ、最初。座ったことがないというか、何もできないという感じで「何となくこういうの叩いて」って言って、唯一繰り返しできたのが、「Sweet Jane」のリズムで(笑)。ずっとリフレインが続く曲なので、「Sweet Jane」をやって。最初に出した音がそれですね。そこから今までは、もちろん経験で変わっていった部分もありますけど、基本的な部分は変わってないですね。メンバーとコミットし合って、いろんな部分が削られたり、新たな部分が生まれたり、っていう反応はあるんですが、根本はあの時の「Sweet Jane」だと思います。
■1番最初に書いた曲とか覚えてますか?
吉川コウタ:ちょっと記憶が曖昧なんですが、このアルバムに入っている「Freakin' Love」って曲は、超最初期──ひょっとしたら1番最初に書いた曲かも知れないですね。
■The Plashmentsの初ライブは覚えてますか。
吉川コウタ:覚えてます、渋谷のクラブでやりました──覚えてるんですけど、内容は覚えてないです。
■夢中で?
吉川コウタ:いや、結構──呑んでたし(笑)。緊張もあったし、お祭りになればいいな、みたいな感じだったので。結成して、初ライブはその半年後だったんで、俺らの演奏ももちろん酷かったです──このジャケットの写真を撮ってくれてる、タケウチカイト君という子が、カメラを始めたばかりで。彼とはライブで知り合ったんですけど、仲良くなって
「俺はバンドを始めたんだ」って言ったら「俺はカメラを始めたんだ」って言ってて、「初ライブだ」って言ったら、「じゃあ撮りに行く」って。その時の写真を持ってるんだけど、もうね、俺らの演奏と同じぐらいに酷いです(笑)。「わざとやってる?」みたいな(笑)。俺らはアンプの使い方も分からないし、向こうはカメラの使い方も分かんなかったと思うんで、そういう意味では、俺らのベストの演奏が入ったアルバムに、こういう素敵な写真を撮ってジャケットにしてくれたっていうのは感慨深いものがあります。
■レコーディングはいかがでしたか?
吉川コウタ:そうですね。ちゃんとしたレコーディングは初めてだったんで。レコーディングは凄く……何ていうんだろ……出来ることしか出来ないって思いましたね。いい意味で、「これしか出来ない」の「これ」っていう部分が、改めてレコーディングして再確認出来たというか。あと、メンバーとしっかり練り上げて、磨き上げて行った楽曲だったので、そういう意味では作品になってみるとこのメンバーでなければこの作品は生まれなかった、というのもありますね。だから、名刺代わりみたいな感じになりました。「俺らがやってきたのはこれです」みたいな。「こういうのしかやって来てません」っていう作品です。
■これは良く聞かれる事だと思うんだけど、どうして全英詞にしているんですか。
吉川コウタ:特に理由はないんです。僕自身もネイティブ・スピーカー(英語が母国語の人間)ではないし、個人的には日本人なら日本語でロックンロールを歌うのが普通の事だと思うし。例えば、井上陽水さんの「傘がない」は日本語だから、日本人の琴線に触れるブルースになったと思うし、いにしえの黒人ブルースマン達は、自分たちの言葉で嘆き、苦しみや喜びを歌っているので、あそこまで感情が伝わると思うんですね。
僕の場合は、最初に書いた曲が英語の方がノリが良くて、という事から始まって、先ほども言ったように、自然に英語が出てくるわけではないので、比較的言葉自体と向き合う作業があるんですよ。そこで一旦冷静に「書く」作業があるので、そこが好きなんですよね。メッセージ性も含めて。
■なるほど、実に面白いですね。
吉川コウタ:なんだろ……真面目過ぎるんですかね。
■実は、僕も初めて買ったレコードってビートルズの「ヘイ・ジュード」で、吉川さんと同じ様にたまたまテレビでビートルズを観て「うわ、これスゲぇ!」と思って、ロックに出会ったんですよね。で、それを人に言うとやっぱり「林さん、それ、出来過ぎてないですか?」ってよく言われる(笑)。
吉川コウタ:(笑)「初めて買ったシングルが、ビートルズ!?それは嘘でしょ!」ってなりますよね。「絶対、アイドルだろ?」って(笑)
■そうそう(笑)。言った瞬間、シラーッとしちゃって「……それはいくら何でもカッコ良すぎじゃないですか」とかって言われることが多いんだけど(笑)。
吉川コウタ:俺も、おねだりして買ってもらった最初のアルバムは、THE HIGH-LOWSの「flip flop」なんですよね。「マニアック過ぎだろ!」みたいな(笑)。好きになってから初めてリリースされたのが、それなんですよ。小学校・中学生が「これってどういうコンセプトのアルバムなんだろ」とかって、調べないじゃないですか。
■(笑)そう、だからビックリされる。
吉川コウタ:そうですね。だから多分──疑ってるんでしょうね(笑)「本当かよ?」って。
■いやいや、でも本当なんだよね。
吉川コウタ:そうですよ。
■名刺代わりのアルバム、これは1枚目ですが、今後のThe Plashmentsの構想はあるんですか。まだ1枚目もリリースされてない中で聞くのもアレなんですが。
吉川コウタ:そうですね──今後は──まだ未知数な部分も当然あるんですけど、こうやって言うと語弊があるかもしれないけど、より重くより激しくはしたいですよね。別にヘヴィーロックになるとかいうわけではないですけど、例えばmy bloody valentineの十何年ぶりの新作、って去年出たじゃないですか。あれが去年の僕のベストアルバムで。聴いた時に、my bloody valentineの凄いハードコアが完成したと思ってて。音自体はさして良くなってる訳ではないんだけど、「より激しく」っていうか。ちょっと、自分達を突き詰めて行く部分が必要になってきたように感じましたね。そういう意味で、重く、ヘヴィーな印象があります。
■これから音楽シーンに、全員で「Kicks&Rush」で挑んでいくと思うんですけど、お一言頂けたら。
吉川コウタ:そうですね……別に何を期待してる訳でもないですけどね、今の音楽シーンに対して。ただ、ちょっとケガしてもらうかもしれないですけど──火ぐらいつけたいですね。楽しみにしていてください。
TEXT/Interview:林 拓一朗(FIX)